「良い家」ってなに?(私見) [ ・コンセプト]
先日、都内での打合せの後、新幹線までの時間に軽く飲み会となったのですが、
飲み会の終了間際、具体的に家作りを考えている方からこんな質問をされました。
「家作りをする上で、『ここは大事!』って言うところは何ですか?」
「例えば、『基礎工事』が一番重要だとか、『構造』だとか、、、
それと、『外断熱』ってどうなんでしょうか?」
誰にとっても素朴な疑問であり、本質を突いた質問だと思います。
外断熱についての質問も、住宅相談でほぼ毎回聞かれることです。
住宅業界関係者、家作りを経験された方はどうお考えになりますか?
これについての正解はないと思いますが、私見ながら僕の考えを述べたいと思います。
戸建てを所有するという前提となりますが、
僕が考える『良い家』とは、次の3つの視点を満たしたものと考えます。
①住まい手の視点 オーナーが望む使い勝手と価値観が実現されていること。
②地域住民の視点 その町の景観に調和し、町の価値を高めるデザインと品位。
③経済的視点 ①と②を満たした上で、オーナーのマネープランを満たしていること。
なぜか?
①は、建築とは住まい手であるあなたが、思い描いた生活が手に入る手段であり、
②は、建築の外観は社会資産であり、良いコミュニティを育むものでありたいから。
それら2つを、オーナーの許す予算の中で達成できたものだと考えます。
こう言ってもなかなかピンと来ない方も多いかもしれませんね。
日常において僕らが使っているモノは、メーカーや企業が作った製品の中から
予算に応じて選んだものですよね?
建築ももちろんその制約を受けますが、家の機能性や使い勝手は施主であるあなたが、
自由に空想して手に入れることができる唯一のものなんです。
基礎や構造と言うのは当たり前品質(必要条件)であって、
良い家であるための十分条件ではありません。
姉歯氏の事件は、この「当たり前品質」を悪質な偽装により意図的に低下させたため、
大きな問題となったわけです。
繰り返しになりますが、
その家の主役である、住まい手が求めるライフスタイルが実現できる家が
良い家なんだと思います。
例えば、浜自カフェ自邸を例にあげましょう。
僕ら夫婦は、自分達の住まいを企画するに辺り、以下のような3つの夢を描きました。
■夢(目標)
1)例え小さくとも、僕らが行きたくなるようなカフェを作り、お客さんに利用してもらいたい。
2)地元の木材を使い、丈夫かつシンプルな飽きのこない空間にしたい。
3)自然を感じられる日常環境で子育てをしたい。
そのための手段として、
①建物そのものがカフェの広告塔として機能するようデザインをし、
②吹抜けを設けて、狭くともゆとりを感じられる店内空間を作り、
③地元天竜の杉を中心に、建築材料の種類を極力少なくダイナミックに使うようにしました。
④また、庭には食べられる実がなる木と、自然樹形の中高木をたくさん植えました。
僕らは住まいを手に入れるためだけに、毎日の生活を犠牲にすることは求めません。
そのため、年間を通じ無理のない支払い額から借入れ額を計算し、総事業費を算出しました。
設計及び工事の段階では、次々と増額になるような決断に迫られましたが、
最初に決めた天竜杉で作る、浜松自宅カフェと言う基本コンセプトに照らして、
涙を飲んで切り落としていきました
(本当、この一つ一つの決断には施主の立場としては、毎回揺らぐんですよ~)
これは設計者としての意志ではなく、施主としての意志です。
すべては僕らオーナーの頭の中で思い描いた空想なんです。
それを設計チームの3人で共有し、知恵を出し合い、浜自カフェ自邸が完成しました。
ですから住み始めから、違和感なく生活できるんですね。
もちろん、良くも悪くも想定外のこともありましたけど、
上位3つの目標はクリアしていますから、取るに足らないことだと思っています。
図面の前にまずコンセプトと言う記事を過去に書きましたけど、そんな理由からです。
さて、夜も更けてまいりました。
「外断熱」に対するコメントはまたの機会にさせていただくことにします。
良い家の条件、夢、目標、お考えをじっくり読ませていただきました☆
外熱材や、鉄筋の数が足らないマンション等、いろいろまた出てきましたね~(~_~)
by (2007-11-08 07:56)
家を建てる前に浜自カフェさんと
知り合いたかったです…(`・ω・´)
設計をお願いするしないはさておき、
こういう考え方を腹に据えて考えられるかどうかは大切ですね。
次に建てる機会があれば(あるのか!?)
自分なりに色々考えたいです。
仕事にも役立つ考え方です!
良いお話をありがとうございましたm(_ _)m
by JOHN (2007-11-08 08:07)
まったく仰るとおりです。
おそらく多くの方々が抱く不安というのは、建設業界に対しての不安なんでしょうね。
設計段階で論外の粗悪な建物もありますが、たいていは施工に関することなんじゃないでしょうか。
基礎でも上物でも内装でも作り手によって、仕上がりが大きく変わってしまう事実は否めませんからね。
とにかく、いい指揮者(監理者)がいて、いい奏者(実施工者)が腕を振るい、いい聴衆(施主)がいて三位一体になってこそ、すばらしい作品(住まい)になるんでしょうねぇ。
by hidenosuke (2007-11-08 08:31)
同感です。
施工側の自己満足なんて
あってはいけません。
全てはお客様の満足度
それが実現できなければ
ホンモノにはなりえませんから
リフォームでも同じことが
いえますよ。
by macoto (2007-11-08 10:54)
一般のお施主様は、ハウスメーカーを必ずしも信頼しているわけではないが、信頼できる確かな建築業者を選択できずに「間違いがなさそうだ」と思われるハウスメーカーに建築を委ねる結果になってい待っているように感じます。(全てとは言いませんが、無視できない一定数が該当しているのでは?)
その意味で、自社のコンセプトを明確に伝えられるというのは、とても大切なことだと感じました。
家は買う物ではなくて、「造る物」「建てる物」との助婦式を取り戻さなくてはなりませんね...。
PS.
「家造りをする上で何が一番大事か?」と聞かれたら、迷わず「屋根」と答えてしまいそうな昨今の出荷状況です...。
by たいせい (2007-11-08 13:17)
よくわかります。
もっと極論はオーナー良い家だと家族が感じられればそれで良いと
思っています。
理想で言えば、経済的な部分との戦いの末、手にしたものだということを
あとで思い出すのは、できるだけ避けて欲しいと感じます。
by plusgate (2007-11-08 17:19)
なるほど、オーナーのビジョンとコンセプトがはっきりしていることが重要なようですね。その上に社会性や経済性などが加味されて出来上がるというわけですね。
我が家はマンションで決まった間取りでしたので、コンセプトもビジョンもないままに来てしまいましたが、将来一軒家を建てることがあれば十分考えたいと思います。
by (2007-11-08 23:40)
●夢空さん
私の稚拙な文章をお目通しいただき、ありがとうございます。
それにしても、建設業界への不信が増えるばかりで困りますよ。
●JOHNさん
そういってもらえると嬉しいです。
しかし、何が仕事に役立ったのでしょうか?(気になる)
●カフェオランジュさん
nice、ありがとうございます。
●hidenosukeさん
さすが優良な施主さん!ここでは書かなかったのですが、良い家ができる
条件を最初に説明したんです。
「良い施主」「良い設計者」「良い施工者」の3人のチームワークが
良い住宅を作る条件なんだと。
●macotoさん
もちのロン、リフォームも同じですよ。
ある意味、条件的にはもっと厳しいかもしれませんね。
●たいせいさん
>迷わず「屋根」と答えてしまいそうな昨今
わはは、思わず笑ってしまいましたが、それで良いんではないでしょうか。
僕は設計の重要性にフォーカスした論調でまとめていますからね。
ハウスメーカーの台頭はまさにその一点に尽きるでしょうね。
不信感の払拭が最大の不安なお施主様には、ハウスメーカーが最大の
満足なのであればそれが健全な姿だと思います。
その上で、建築は買う物ではなく、「建てるもの」と言うスタンスを強調
したいと思っています。
●plusgateさん
経済的な視点は、いわゆる「バリュー・フォー・マネー」のことを言いたかった
んですね。
最初は僕もオーナー良ければと述べていたのですが、「いや待て!」と
考え直し、②の視点を付け加えました。
②の視点は、梅図邸や国立マンション訴訟を例に次回でも追加します。
by 浜松自宅カフェ (2007-11-08 23:57)
●みほさん
nice、ありがとうございます。
●eddieさん
僕が言いたい事をほぼ完璧にご理解いただいていますね。
なぜビジョンが必要かはまたお話しますね。
コンセプトがハッキリしない家(家に限らず、製品、サービスも)は、
良く判らないと言う印象になりますね~経験上。
そういう建築は大体においてリセールバリューが低くなりますね。
by 浜松自宅カフェ (2007-11-09 00:03)
良い家の条件として、私は一定の「定義」と「法則」があると言っています。
定義として次のの4点を揚げています。
●国が定めた「良質な住宅建築の法則」に沿って建てられた家であること。●家を建てる土地の「気候・風土」に合っている家であること。
●その家に住む家族のコンセプトが生きている家であること。
●2代、3代に渡って住み続けることができる、丈夫な家であること。
国が定めた「良質な住宅建築の法則」とは、なんぞや?とよく」聞かれますが、それは、「建築の3大要素の分割」だと、答えています。
3大要素・・・設計・施工・監理です。
私が言っていることは、浜自カフェさんと、そんなにかけ離れているとは感じません。
「経済的視点」を加えれば、完璧となりますかね?
外断熱については、かなり勉強・研究したうえで、「私としては採用しない方向性」を打ち出しています。
浜自カフェさんのご持論を期待しています。
by アキラ (2007-11-10 11:50)
一生に一度の「家を作る」という大イベント、それぞれのライフスタイルに一番合った家が本当にいい家なんですよね。
今が狭いマンションだから、大きい家だといいというわけでもないですよね。住んでいきながら、その家を掃除して維持していく時間と経済的な余裕があるかというのも問題ですし。
もちろん分相応のものでないとその家に住むがために、苦しい生活をするようでは意味がないです。
楽しい生活をするためのベースとして捉えなければいけないですね。
建築という面でも、施工者にまかせっきりではなく、気になることは依頼者も勉強しながら選択することが大事ですね。
by ●ぱんくろう● (2007-11-11 10:30)
●アキラさん
アキラさんの提唱する「定義」と「法則」はまったくもって異論ありません。
僕とは違う切り口で、アキラさんなりの「良い家」を定義付けられたものと
理解しています。
法を守ることや、構造上丈夫なことなどの基本機能は、当たり前性能と
まとめてしまいましたけど、それすら当たり前に手に入るわけでは
ありませんからね。
外断熱のことはアキラさん程の細かな判断軸を持っているわけでは
ありませんが、僕なりの意見も書かせていただきますね。
●xml_xslさん
nice、ありがとうございます。
●ぱんくろうさん
お気付きのようにお施主さん自信も勉強した方が、良い家の実現は
確実なものになると思います。
建築と言うのは、やはりちょっと特殊な業界なのですが、物販との違いと
職人気質の理解ができると自分スタイルの満足度の大きい家が実現
できると思います。
by 浜松自宅カフェ (2007-11-11 21:01)