図面を描く前に行なう重要なこと [ ・公共施設]
今回は公園設計の話を例にしたため、少し専門的な話になりますが
完成形が見えない仕事に取り組む際、多少なりとも参考になるのではと思い記事にしてみました。
少しでも多くの方の参考になれば幸いです。
* * * * * * *
昨年秋の終わり頃から、公園の整備計画策定業務が具体的に進んできたようで、
年末に簡単な打合せをし、作業の進め方を話し合いました。
僕は計画案を絵にする作業を依頼されたのですが、年末年始休暇にいくらかエスキースを
進めていておこうとスタディを始めたわけですが、どうにもまとまっていかないのです。
数ヘクタールもある大きな面整備の計画策定は、建設コンサル時代以来10年ぶりだから?
などと思っていたのですが、しばらくスタディを続けてみて理由が判りました。
それは、、、、、
計画地が6ヘクタール(60,000㎡)以上もあるのですが、幹線道路からの主な
交通動線が決まっていなかったから。
考えてみれば至極当たり前の話ですが、公園に限らず、住宅団地や工業団地、大規模SC
(ショッピングセンター)のような面計画は、幹線道路からのアクセスをどうするかによって、
駐車場の位置が決まるわけです。
場合によっては、乗り入れさせる車種を乗用車だけか、大型バスも入れるのかによって、
道路幅員や交差点の曲率半径も変わってきます。
(これによって、整備コストが大きく変わりますからね~)
さらに、どのような性格の施設を整備するかによって、駐車場をどう分散させるかが変わるし、
それによって施設利用者のエントランス配置が変わってきます。
また、資材の搬出入路確保の有無も検討が必要ですし、駐車場出入り口の位置を間違えると
必要以上に大きな道路渋滞を招いたり、駐車場から出る車と道路を走る車が接触事故を
起こすような場合もあります。
もちろん、このような道路に関係する部分まで、発注者と設計者だけで決まるわけではなく、
プランの段階で、警察協議や場合によっては消防協議を重ねて決定していきます。
しかし、事前の配慮がまったくされていないと、時間を掛けて議論してきた案がすべて振り出しに
戻ってしまうこともあるため、絵作りをする前に良く検討しておきたい内容です。
そんな訳で、発注者(市役所)へのプレゼン前に計画者と打合せを行ない絵作りを始めました。
上の絵は打合せしながらスタディしたものです。
こうして、設計者のイメージや思想を可視化したものがプラン図であり、具体的になったものが
図面なんです。
スケッチや図面で可視化することにより、関係者がイメージを共有し議論を円滑に進め、
間違った判断をしないようにするわけですね。
設計者を英訳するとデザイナー(Designer)となりますが、デザイン(Design)を逆引きすると
『企画する』『企てる』と言う意味であることから、すべては思想が重要だと言うことで、
図面を書いたり、意匠を考えるのはプロセスとしてはその次の事なのです。
これは、大きな事業を企画する場合に関わらず、どんな小さな住宅を計画する際でも
まったく同じで、ここが抜け落ちているとディティールを作る際に、中途半端なものになり、
利用者にとって魅力が無いものになってしまうので気をつけたいものです。
・・・と、自戒の念を込めて(笑)
こんちは。
いつから面整備の仕事を始めたの?昔取った何とかでうまくまとまるといいですね。
しかし答えが一つではない面整備、時間が掛かりそう・・・
月末の予定はオレ1人で行くことになりそうです。この時期年度末でみんな動きが取れないようです(T_T)
by カラシレンコン (2009-01-18 23:01)
そういえば、トヨタが富士でF1をやることになって近隣の道路を突貫工事で整備しましたが、結果的に大失敗に終わりましたね。
それと同じことでしょうか。
きちんと根拠を示して企画を立てないといけませんね。
何事もどこまでイメージを具現化できるか、身につまされます。
by eddie (2009-01-18 23:07)
●カフェオランジュさん
nice、ありがとうございます。
●とりのさとZさん
nice、ありがとうございます。
●カラシレンコンさん
過去記事をみてもらうと判るけど、面整備の仕事をはじめたわけじゃなく、
いわゆる昔とった杵と言うヤツで、自転車を通じた友人から上位計画策定
の手伝いを求められたから。
恐らく、今回の基本構想の絵作りだけになると思うよ。
(と言うかそれ以上は、時間的にも無理だしね)
基本設計以降の業務はコンサルへの発注になるらしく、友人は
副市長から「整備方針作りは地元を良く知る企業に!」と相談を求められ
たそうです。
この副市長のやり方は僕も正しいと思うんだよね。
コンサル時代、山形や新潟、宮城のランドスケープデザインもさせて
いただいたけど、地元の気候風土、文化をキチンと知らない僕らが
チョロっと調べて提案することに疑問を持っていたから。
今回の計画は僕自身が利用者になるので、「これだったら使いたい!」
と思える提案をしました。
もちろん、整備コストもメンテナンスコストも必要最小限に抑えることを
前提に。
そういう意味では、地元を知り、ハードとソフトの両面から具体的な提案
ができるランドスケープデザイナーと言うのは、建築士よりもまったく
いないことを実感した次第です。
●eddieさん
富士F1の例は僕も知っていますが、本当の要因は知りません。
設計でも、突貫工事は何度かありますが、あまりにも突貫な場合は、
どうしてもどこかに無理が来ますね。
しかし、のんびりやれば良いと言うわけでもなく、適正な期間と言うのは
ありますから。
eddieさんのお仕事も、10年先をイメージする必要がありますから、
同じようなプロセスを経験されているのだと思います。
by 浜松自宅カフェ (2009-01-19 09:38)
大きな仕事ですね~
でも住宅とプロセスは同じ。
利用者が使いやすいものが一番です。
頑張ってくださいね。
by plusgate (2009-01-19 10:19)
私が携わっている、チマチマっとした工事に比べて、なんとスケールの大きな仕事なんでしょう?凄いですね~!
規模こそ違え住宅も同じですが、施主の意向を無視して勝手に「設計者の主張を押しつける」建築士もいたりして、間を取り持つのに苦労をすることもありますよ。^^;
by アキラ (2009-01-19 11:03)
製造メーカーとして製品戦略を進めていくに当たり、やはりコンセプトが非常に大きな意味合いを持つと言うことに永年直面してきました。
ただコンセプトをまとまると行っても、自分の頭にあるのは当初は漠然としたイメージのみで、具体化するためにKJ法やマッピング、製品イメージのスケッチなど様々な手法を使ってより具体的なものに抽出していく作業が不可欠で、最も大切な作業だと感じてもきました。(ここを端折ると、絶対に売れる製品とは成りません)
大変ですが、最もインテリジェンスの必要な楽しい作業ではないかと思います。(煮詰まると地獄になりますが...。)
どんなものになるのか、楽しみにしています。
by たいせい (2009-01-19 16:43)
●JOHNさん
nice、ありがとうございます。
●plusgateさん
そうなんです!単に面積が大きいだけでやることは同じなんです!
9年この仕事をやってみて、「相手が組織か個人かの違いだけであって、
建設業のプロセスとしては同じ!」だと気がつきました。
ですから、面開発ならではの視点にさえ慣れれば、設計を生業として
いる人なら誰でもできるのではないでしょうか?
逆に、それ故にビジョンが大事なんだと思います。
●アキラさん
チマチマとか言わないで下さいよ~!
そんなこと思ったことも無いですから。
知らない人にこの話をすると、「大きい仕事で良いね!」とか言われる
のですが、実際の実務自体はメチャメチャ地味な業務なんですよ。
こういうクリエイティブなことなんて、全体の業務の5%とか言われている
くらいですから(笑)
●たいせいさん
さすがにやることはやっていますね!
コンセプトの収斂作業は、「発散」と「収束」の繰り返しですよね。
頭の中でイメージしているだけでは出来ませんから、可視化して
色々な職能の人と前向きなディスカッションをすることで、よりレベルの
高いものに積み上がっていくとワクワクしてきます。
僕は人と仕事をする際、常にそういう循環ができるように意識して
いるのですが、それが上手く行くと楽しいだけじゃなく、効率良く、
期待以上のものが出来て、成功する確率が高くなりますね♪
by 浜松自宅カフェ (2009-01-19 21:17)
おお!写真から察するに^^
カフェが アトリエに^^ いい感じです^^
by denn (2009-01-20 21:43)
●dennさん
そうです!この時はカフェ店内でコーヒーを飲みながら、エスキースを
していました。
本当は大テーブルの方が良いんですが、それはいつかアトリエを
持つことを夢見て!
by 浜松自宅カフェ (2009-01-20 21:53)
●今造 ROWINGTEAMさん
nice、ありがとうございます。
by 浜松自宅カフェ (2009-01-22 00:46)