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ビオトープを再定義する [ ・ビオトープのある研究所]

今から丁度2年前に「ビオトープのある研究所」の設計担当者となり、打合せを
進めていくと「ビオトープ」をキチンと定義出来ていないことがわかりました。

お施主さんは、人生において自分よりも大先輩である上、経営のトップです。
設計担当者として適任では無いと判断されれば、即座に交代となります。

幸いにしてこれまで担当者として駄目だと言われた事はなく、むしろ問題物件の
代打として事態を収束させる役割りを担う事が多かったので、お施主さんの
言葉を真摯に聴き、その言葉から本当の要求を引き出す事に時間を割きました。


幾度となくイメージの擦り合わせをし、お互いの理解が深まったところで
実施設計図を作成し、施工会社選定のためゼネコン各社に見積り依頼をすると
思った通り「ビオトープ」の認識が間違っていました。

従来のビオトープの認識は、「池」や「湿地」と言うモノ

であるのに対し、僕が提案したのは「人為的に作った自然環境と生態系」。


「池」や「湿地」などの構造物ではなく、概念的なものであるため理解しにくい
ものでしたから、ここは急がずに時間をかけて理由や考え方の共有を図って
いきました。

しかし、工事で造るのはやはり構造物ですから、写真などの映像では
こんな風に表現されます。
ビオトープの定義1.jpg
■2019/9/29 早朝の様子
水の中の魚の様子や野鳥が来た様子は前回、前々回の記事にした通りですが、
建設行為によって得られた物はこんな風に見えるだけになります。


しかし、都田川中流部のワンドに生息する水生生物を保護すると決めた事で
護岸や河床、池底の構造が決まり、玉石の大きさや配置、水流の速さが
決まってきました。



ビオトープの定義3.jpg
■ジャカゴ護岸
鉄線で編まれた網籠に大き目の割栗石を詰めたものを蛇籠(ジャカゴ)と
言います。本来は河川の護岸保護のために使用されるものですが、水生生物
にとって最も重要なのは水縁の構造と多様な環境です。

モロコやモツゴのような小さくて弱い魚は、外敵から身を守る場所がとても
重要です。このように身を隠す場所がそこかしこにあれば、魚の数は爆発的に
増えるはずと考えましたが、1ヶ月で正しかった事が裏付けられました。


以上は、ビオトープを再定義した経緯ですが、水田環境を再現したビオトープ
も決して間違いではありません。
しかし、企業の目的からすると、水田ビオトープの場合、地域性を訴求したり
来客の反応を考えると弱いものがありました。(やり方があります)

完成後のお施主さんの反応を見ると、僕の考えを100%理解されていたわけでは
ありませんでしたが、僕の説得に理解していただいた結果、水生生物が自然繁殖
できる環境となり、お施主さんが期待していた以上のビオトープが出来たと
言っていただけました。

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浜松自宅カフェ

●@ミックさん、鉄腕原子さん、jun-arさん
 nice、ありがとうございます。
by 浜松自宅カフェ (2019-10-08 11:41) 

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