オートキャンプ場の計画 [ ・公共施設]
昨年に引き続き、友人からの依頼でオートキャンプ場の基本計画をお手伝いしています。
■区画サイトのスケッチ
建設コンサル時代にキャンプ場の設計をした実績はありませんが、家族が出来てからは
年に数回、ファミリーキャンプを楽しんでいますから、その経験から自分が行きたくなる
キャンプ場になるよう提案し、スケッチを起こしています。
依頼してくれた友人は自然遊びの仲間で、共通の価値観を持っていることを知っているため
「楽しく打合せできるから」と僕に相談をしてくれました。
それならば、期待に応えたいですよね~。
年明け早々に、必要な図面、スケッチの他、進め方について打合せを行ないました。
このキャンプ場は、近隣のキャンプ場との住み分けを考慮に入れながら、
単にテントサイトを詰め込むのではなく、わざわざ行きたくなるキャンプ場にする
ことで意見が一致しています。
僕からは、夏期の稼働率を上げるために、新たに雑木林を造成し、緑陰で快適なキャンプを
楽しめるゾーンを提案しました。
クヌギやコナラを植えることで、夏休みにはカブトムシやクワガタ採りを楽しめるし、
ハンモックでの昼寝もしてみたいですよね。
育ちすぎた樹木は伐採して、シイタケのほだ木にしたり焚き木に使用できます。
落ち葉が散る晩秋のキャンプや新緑のキャンプも魅力的だと思います。
その他、友人は近くの水辺を利用してカヤックゲレンデを提案していました。
レンタルカヌーを用意してカヌー教室を開くこともできそうです。
一昨年、試しにカヌーを浮かべてみたところとても気持ち良く、参加者の評価も高かったそうです。
今年度は基本計画の前段階のようなもので、
区画サイトの標準パターンを検討したところ、来年度の検討課題が見えてきました。
交通アクセスについてももう少し踏み込んだ検討が必要なことも明確になりました。
整備も供用もいつになるかは全く未定で、子供と利用することができるかどうかは
判りませんが
たくさんの方が利用できるようなキャンプ場になるよう計画にしたいと思います。
図面を描く前に行なう重要なこと [ ・公共施設]
今回は公園設計の話を例にしたため、少し専門的な話になりますが
完成形が見えない仕事に取り組む際、多少なりとも参考になるのではと思い記事にしてみました。
少しでも多くの方の参考になれば幸いです。
* * * * * * *
昨年秋の終わり頃から、公園の整備計画策定業務が具体的に進んできたようで、
年末に簡単な打合せをし、作業の進め方を話し合いました。
僕は計画案を絵にする作業を依頼されたのですが、年末年始休暇にいくらかエスキースを
進めていておこうとスタディを始めたわけですが、どうにもまとまっていかないのです。
数ヘクタールもある大きな面整備の計画策定は、建設コンサル時代以来10年ぶりだから?
などと思っていたのですが、しばらくスタディを続けてみて理由が判りました。
それは、、、、、
計画地が6ヘクタール(60,000㎡)以上もあるのですが、幹線道路からの主な
交通動線が決まっていなかったから。
考えてみれば至極当たり前の話ですが、公園に限らず、住宅団地や工業団地、大規模SC
(ショッピングセンター)のような面計画は、幹線道路からのアクセスをどうするかによって、
駐車場の位置が決まるわけです。
場合によっては、乗り入れさせる車種を乗用車だけか、大型バスも入れるのかによって、
道路幅員や交差点の曲率半径も変わってきます。
(これによって、整備コストが大きく変わりますからね~)
さらに、どのような性格の施設を整備するかによって、駐車場をどう分散させるかが変わるし、
それによって施設利用者のエントランス配置が変わってきます。
また、資材の搬出入路確保の有無も検討が必要ですし、駐車場出入り口の位置を間違えると
必要以上に大きな道路渋滞を招いたり、駐車場から出る車と道路を走る車が接触事故を
起こすような場合もあります。
もちろん、このような道路に関係する部分まで、発注者と設計者だけで決まるわけではなく、
プランの段階で、警察協議や場合によっては消防協議を重ねて決定していきます。
しかし、事前の配慮がまったくされていないと、時間を掛けて議論してきた案がすべて振り出しに
戻ってしまうこともあるため、絵作りをする前に良く検討しておきたい内容です。
そんな訳で、発注者(市役所)へのプレゼン前に計画者と打合せを行ない絵作りを始めました。
上の絵は打合せしながらスタディしたものです。
こうして、設計者のイメージや思想を可視化したものがプラン図であり、具体的になったものが
図面なんです。
スケッチや図面で可視化することにより、関係者がイメージを共有し議論を円滑に進め、
間違った判断をしないようにするわけですね。
設計者を英訳するとデザイナー(Designer)となりますが、デザイン(Design)を逆引きすると
『企画する』『企てる』と言う意味であることから、すべては思想が重要だと言うことで、
図面を書いたり、意匠を考えるのはプロセスとしてはその次の事なのです。
これは、大きな事業を企画する場合に関わらず、どんな小さな住宅を計画する際でも
まったく同じで、ここが抜け落ちているとディティールを作る際に、中途半端なものになり、
利用者にとって魅力が無いものになってしまうので気をつけたいものです。
・・・と、自戒の念を込めて(笑)
公園設計の依頼 [ ・公共施設]
1ヶ月程前のこと。自転車がきっかけで知り合ったSさんから突然電話をいただいた。
「お久しぶり!今、何やっているの?実は公園の設計を手伝って欲しいんだけど・・・」
概略を聞くと技術的には問題なさそう。けど時間的なことや進め方にも寄るため現地踏査も兼ねて
具体的な話を聴きに行ってきました。
会社へ訪問するためJR東海道線で掛川駅(北口)まで。
新幹線が停車する駅なのですが、掛川城のある北口は木造の良い感じの駅舎です。
最近の駅前はどこも同じような景観で、地域の独自性がまったく感じれらないものが多い中、
ここ掛川は復元した掛川城を中心とした城下町の景観整備を行なっています。
しかし、そんな特色のあるこの駅舎をJR側が近代的な駅舎に建替える方針だということを
Sさんが溜息交じりに教えてくれた。
駅構内のバリアフリー工事に併せてのことらしい。
明るくモダンな建物に商業施設を誘致して、エキナカ消費をさせたいのかもしれないけど、
本当にそれで良いのか?
僕は絶対違うと思うのだけど・・・。
さて、、、気を取り直して公園整備の話。
今年度までの経緯を伺い、今後作業を進める上でやはり現地調査に行った方が良いと思い、
計画地周辺を案内していただいた。
図面を描くだけなら写真や図面があればできるけど、僕は現地の空気感や現地に行くまでの
行程を知らなくては地に足の着いた計画にならないと思っている。
一つは、茶畑越しに大井川や静岡空港(工事中)が見渡せる山の中。
これほど見渡せるお天気は珍しいそうだ。
下界よりも3~5℃くらいは気温が低いように感じるほど涼しく快適で気持ち良かったな。
もう一つはこんな場所。
正面に見える海はクロマツ林越しに見る遠州灘。
ほぼこれまでの経験からご協力できそうな内容でしたし、具体的な整備方針を決める重要な
業務だと理解したため、喜んでお手伝いさせていただくことに。
何より、「公園設計をできる会社は知っているけど、打合せがつまらないものになるのが容易に
想像できたから」と、僕に声を掛けてくれた理由が嬉しかったしね。
事務所に戻り、今後の検討作業を進める上で懸念される課題を説明いたしました。
現場を回る車の中や事務所での雑談でも、色々と参考になる面白い話も聞けたし、
わざわざ時間をとってでも行って良かった。
Sさん、楽しんでやりましょうね~♪
栃木県足利市『迫間自然観察公園』の設計 [ ・公共施設]
12年程前と少々古い話で恐縮ですが、建設コンサル時代に設計を担当した現場の状況が
気になり、ネットを検索したところ幾つかのサイトで紹介されていました。
自分が担当した現場はできるだけ見に行くようにしているのですが、完成を待たずして浜松に
Uターンしたため、なかなか見に行けていない物件も多々あります。
今回の迫間(はさま)自然観察公園は、僕が提案した原設計にかなり忠実にできていて、
とても嬉しくなったので記事にしちゃいました♪
栃木県足利市にある迫間(はさま)湿地を保護するため、自然観察ができるような公園にするため、
基本設計の委託を足利市教育委員会から受託したのが最初だったと思います。
この公園の計画では、湿地と言う非常に繊細な環境を人が利用できるように整備することが
求められました。
しかし、社内でも周囲でも湿地公園の設計経験者がいなかったため、工事の手段を含め、
判らないことだらけでとても苦労した物件だったので、後の状況が気になっていました。
細かいことをあげればキリがないのですが、土木屋さんが作るような公園にしたくなかったし、
どう考えてもイメージにあるのは尾瀬の景観でした。
だけど、尾瀬の木道なんてどう設計しているのか判らなく、今のようにネットで簡単に調べられる
時代でもなかったため、思案した結果、自腹で尾瀬に見に行くことにしました。
ところが、時期はGW前で、山には雪が残り尾瀬にはまだ入れない。
第一、尾瀬の行き方も知らなかった。。。
思案していても始まらないため、「とり敢えず行ってみよう!」と考え、小旅行も兼ねて、
一泊二日で独り(当時はまだ、独身でした)尾瀬の清水口と戦場ヶ原に行ったのです。
やはり行ってみるもの見てみるものですね。
清水口の手前に小さいながらも木道が整備されており、木道の構造がリアルに理解できたのです。
さらに、山小屋のギャラリーには木道工事の写真が飾られており、写真には尾瀬林業と言う社名が
写っていました。
電話帳で電話番号を調べ、木道の写真を撮り、東京に戻った後、尾瀬林業に電話を掛けて
木道整備の担当者を教えてもらい、詳しく教えていただいたことで活路が見出せました。
尾瀬の(確か)半分は東京電力の所有地で、東京電力から委託を受けて木道整備をしていること。
木道の図面はあるけど簡単なもので、基本的には現場の状況(特に出水)に応じて現場で
構造を決めて施工していくこと。
木道に使っている樹種は直径30㎝のカラマツを半割りに挽いたもので、尾瀬の気候だと
10年程度の耐久性があることなどを丁寧に教えていただいた。
迫間湿地の公園は、足利市が発注するものでしたが、建設省の補助金(いわゆる国庫補助金)を
受ける事業であるため、会計検査の対象となり根拠のハッキリしない設計はできないのです。
もちろん、市単独の予算(単費)だったら適当でも良いと言うわけではありませんが、
会計検査と言うのは全国民の税金を使っているため非常に厳しい検査であり、不経済に使用
たことがわかると会計検査報告に上げられ、指名停止になったりすると、クライアントへ迷惑を
掛けるだけでなく、自部門だけでなく道路やトンネル、橋梁部門も指名停止になるため
とても神経を使うのです。
それだけに全国的に有名な尾瀬の事例は、これ以上にない根拠となると思った訳です。
早速、尾瀬の例から木道の実施図面(詳細な図面)を作成し、施工者に仕上がりのイメージが
キチンと伝わるよう原図(トレーシングペーパー)に撮影した写真を貼りこみ、役所の担当者へ説明し
承諾を受けることができました。
通常、こういう公園施設を作る場合、遊具メーカーなどの協力で行なうことが多いのですが、
環境へのインパクトと予算を抑えることを考えると、メーカー製品を使うことは考えられませんでした。
そのため、丸太を材料とし、職人さんが現場で加工することでコストを抑えることにしました。
市役所での打合せの帰り、市庁舎内の電話ボックスでタウンページをめくり、
足利市近隣の製材所の電話番号を調べ、数社から直径30㎝のカラマツ材を半割にする見積りを
採り、図面と報告書にまとめ、設計積算図書と共に成果物として納品して業務完了となりました。
土木系の公共事業の場合、設計監理をコンサルが担当することは少なく、役所の技術者が
現場の監理をするのが常であるため、その後の状況がわからなかったのです。
当時一緒に担当してくれた後輩のM谷さんと言う女性が、時々浜松へ写真を送ってくれたため、
何となくは状況を理解していたのですが、今回の調査でそのときの苦労がほぼ正しかったと確信
できました。
苦しかったけど、思い出深い案件でした。
さて、、、前置きが長くなりました。
下の画像は、法政大学さんの原生生物情報サーバーの迫間湿地からお借りしました。
トップの画像と下記の2点。
ヤナギの新緑は、息をのむ美しさでした!
見晴台と車椅子用木道
夏は背の高さ以上に葦が伸びるため、ところどころに見晴台を設置するよう設計したのですが、
設計通りに作ってくれたようです♪
画像:椎名様の渡良瀬夕景ブログ!より、画像をお借り致しました。
思わず笑ったのがコレ!
湿地独特の植生である谷地坊主(やちぼうず)をモチーフにしたマスコットキャラなのですが、
実はコレ、後輩のM谷さんと殆どノリで考えたもの。
「採用されるわけないよね~!」
って言いながら設計報告書に書いたのですが、しっかりと公園の案内板に印刷されていました…。
嬉しいというより自己嫌悪。
説明書きも無い様なので、意味判らないでしょうね。。。
以上、長々と殴り書きのような雑な記事で申し訳なく思います<(_ _)>
公民館の設計者選定コンペ [ ・公共施設]
最初にそれとなく相談をいただいたのは、昨年の夏頃だったと思います。
仕事仲間のHさんから、お住まいの町の公民館建設について個人的な考えを訊ねられ、
公共施設の設計コンサルタントをしていた経験から、幾つか助言をさせていただきました。
自治体主導の大型開発による新興住宅地に、新たに公民館を建設することになり、
住民による建設委員会が組織され、Hさんは自ら建設委員に立候補したとのこと。
当初案は議論のすえ白紙撤回となり、自治会費に加え公的な補助金による建設となるため、
公平性を期すよう設計者選定コンペを開催することに至ったそうです。
3月23日(日)夕刻の設計者選定コンペ説明会に参加するため、チャリ浜イベントを終え、
自宅でシャワーを浴び、コンペの説明会場に出向き2時間弱の説明を受けました。
当日は7社指名のうち、設計事務所2社、建設業者4社の計6社が説明会に来ていました。
(ちなみに設計者選定が目的ですが、設計契約と工事契約を分離すれば建設業者の
参加も許可されるそうです)
提案書の提出期限は4月20日(日)の17時まで。
今回の提出図書類は基本的に僕が作成し、意思調整の上、Y君の事務所として提出
することにしました。
実は、説明会の翌日時点では、コンペへの参加を辞退するつもりでした。。。
しかし、説明会の雰囲気を見る限り、僕らが辞退したら参加者不在の可能性があったことと、
僕らの考えを直接伝える場を設けていただくことを目標に、コンペに参加することに。
と言うのも、自治会の建設委員達は自分達の町の30年後を考え、本気で公民館建設を
考えていたからで、その理念に賛同したからです。
それに、仮に僕らが引き受けなくてもいつかは何かしらの形で建物が建ってしまうだろうと
思ったからです。
僕らが作成した案は、一見、要求を無視したかのように徹底的にコンパクトにしたもの。
そのため、計画の趣旨を正確に伝える必要があったため、図面に設計趣旨を5つ箇条書きし、
提出の際にも簡潔にその旨を伝えました。
そして昨日夕方、主要建設委員に対し僕らの提案を聞いてもらえる場を設けていただき、
2時間以上に渡り建築設計に対する考え方の他、実際に行なった公共事業のコンサル例、
設計プロセスにおける成果物の実例を提示しながら、図面を描くことよりも重要なことがあり、
今必要なことはそのための議論であることを精一杯説明致しました。
まったく虚飾なく本音でお話させていただくことができ、僕らとしてもやれる限りのことを
したため、とても後味が良い会議でした。
委員の皆さんも真剣に話を聞いていただき、ある一定の理解をしていただいたように思います。
その上で自治会建設委員が、僕らをパートナーとして迎えるか、他の手段を選択するかは
わかりません。
設計者決定の通知はおよそ1ヶ月後。
さてさて、どのような結果になるでしょうか・・・?