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木造住宅の耐震性(その1) [ ・耐震強度、地震対策]

今回は建築技術者を対象に、「耐震」をキーワードにシリーズでお送り致します。
文章中心になりますが、興味のある方は是非お目通し下さい。


毎年、NPO法人建築技術支援協会が主催する、建築技術者向けセミナーを受講している。
今年度は、6月8日(木)に第一回目の講義が行われ受講してきた。

 

今回は、「耐震改修の実効性」について、今年3月に東大を退官なさった坂本先生が
(現、慶応大学理工学部)非常に判りやすく解説して下さった。
坂本先生は、長年、木造建築の耐震性について研究され、建築基準法の改正の際にも
助言をされてきた方で、多方面でご尽力されている。


□坂本先生プロフィール
http://www.adm.u-tokyo.ac.jp/IRS/IntroPage_J/intro70233238_j.html
http://buildcon6.arch.t.u-tokyo.ac.jp/01about_us/sakamoto_isao.htm

その中から、建築に携わる方には、是非知っておいていただきたい事を幾つか採り上げて
坂本先生に成り代わって(無理だけど・・・)お伝えしたいと思います。
基本的に、僕の主観は加えずに、先生の持論、知識をありのままにお伝えしますので、
質問されても回答できない場合があることをご了承下さい。

 

□シリーズテーマ
 (その1)建築基準法における耐震基準の考え方
 (その2)阪神・淡路の震災は、真冬の早朝に起きたから被害者が多かったのか?
 (その3)五重塔は、本当に地震に強いのか?
 (その4)耐震改修は、本当に効果があるのか?

 

□建築基準法における耐震基準の考え方について
まず、下記をご覧下さい。(セミナー資料からの抜粋です)

現行の建築基準法で求めている耐震基準(いわゆる新耐震)の大本となる考え方がコレです。

 

きわめてまれに起こる地震に対して、倒壊だけはしない。

 

きわめてまれに起こる地震の定義とは、
 ・数百年に一度来るか、来ないか?
 ・震度は6強から7程度 → つまり震度7は担保しないと言うこと
 ・横揺れの、最大加速度は300~400ガル(1Gは980ガル)

 

この事実を知らない人は、意外に多いのではないかといつも思っていた。

 

「建築基準法を満たす=大地震でも安心」・・・なのだ!と。


耐震設計を行う際は、2段階の地震に対して行うことになっている。
(ただし、小規模な木造住宅では構造計算は義務付けられていません)

 

■一次設計と二次設計の考え方
 □一次設計
  ・地震動の最大加速度は80ガル程度(震度4~5弱)
  ・弾性範囲に収める設計 → 地震力を受けても壊れない
  ・構造的に無傷


 □二次設計

  ・地震動の最大加速度は、300~400ガル
  ・建物に生じる最大加速度は、980ガル(1G)
  ・塑性化を許す設計 → 構造体が壊れることでエネルギーを吸収する
  ・倒壊はしない → 被災後に避難することが可能

 

■二次設計を超える地震力は担保されない
極論すると、↑こういうことになります。つまり、倒壊してもしようがないと言うこと。

 

しかし、阪神・淡路の大震災(正しくは、兵庫県南部地震)は全域が震度7ではありません。

地震力は、地震のエネルギー深さ表層地盤の性質によって大きく変わってくるため、
地震動が増幅される軟弱地盤では、震度7となるエリアがある。
東海地震における被害想定でも、軟弱地盤エリアは、軒並み震度7が想定されています。

 

■建築基準法のコンセプト
法律はその条文の第一条にその法の目的が記述されている。

第一条 この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、
     国民の生命、健康、財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを
     目的とする。

 

構造について要約すると、「建築物の構造に関する最低基準」

その上で、予算と価値感に照らし合わせて余裕を考えて下さいと言うものなのです。


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stella

今の会社は自社で色々と技術の研究をしていて、
木造三階建ての実物大実験をつくばの研究所で日本で初めて
その他にタニマチのようなことをしていて、
東大・坂本先生の研究室と東洋大の研究室がプレカット工場内に
建っています。
埼玉県南は軟弱地盤が多いので、耐震を気にする方は多いのかも。
by stella (2006-06-28 00:46) 

浜松自宅カフェ

へぇ~自社開発とは凄いですね!住宅は、どうしてもインテリア、デザインだけ
に注目されてしまいますが、「安心して住める」と言う前提の元に成り立っている
わけだから、おろそかにできないですよね。
坂本先生は、今回初めてお目にかかりましたが素晴らしい先生でした。
受講生は皆、建築関係者ですが話に釘付けでした(笑)
by 浜松自宅カフェ (2006-06-28 10:09) 

JOHN

stellaさんのおっしゃっている地盤の弱い埼玉県南に住んでいます。
家を建てる時、夫が耐震性も気にして、鉄骨造りにすると譲らず
基礎工事にお金のかかったことかかったこと…
そんなことを思い出しました。
記事とあまり関係のないコメントでしたm(__)m
by JOHN (2006-06-29 10:03) 

ゆつき

今度の家の場所が地下4mまで弱いらしく地盤強化するらしいです。
まぁ年月が経てば微妙に変わってくると思いますが、地震って
やっぱ怖いですよ。
素人ですが、こんなセミナーに参加したくなっちゃいました。
by ゆつき (2006-06-30 10:41) 

浜松自宅カフェ

●JOHNさん
 埼玉県南部は、荒川の低湿地が発達した都市ですよね?
 川口、浦和、見沼・・・と川や沼に由来した地名からも判ります。
 ただ、関東に限らず、平野部で強固な地盤ってのは少ないですよ。
 だから、「山の手」は土地の価値が高いわけです。水害も少ないしね。
 ところで、JOHNさんは奥様だったのですね?
 勝手に、独身だと思っていました。
●ゆつきさん
 プロの建築屋でも、案外地震や耐震に詳しい訳じゃないです。
 坂本先生の説明は、一般の方が聞いても十分判るような解説で、それが
 また素晴らしかったです。
 受講者の「判らないレベル」が判っているってことですね。
by 浜松自宅カフェ (2006-06-30 16:00) 

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