SSブログ

石巻の公園をデザインしたときの話(後編) [ ・ランドスケープデザイン]

3・11の震災で宮城県石巻市が大きな被害を受けたことを知り、とても気になっているのが
設計者として自分が携わった現場のこと。

それが自分にとって新たな成長の礎となった場合、とても思い入れがあるものです。

真っ白な計画地(土地)に自分が線を描き加えることで、その土地に新たな意味合いの空間を
生み出すのが僕らの仕事なわけで、そこにどんな意味の線を落とすべきかいつも悩みます。


適当にそれらしい線を描き入れ、


「ねっ!格好良いでしょー?」


と言って大切な税金で何十年も残る公共施設を作るわけにはいきません。

それは事業主である県の担当者も同じで、市民や県民、議会、上司に対して簡潔で合理的な
説明ができなくてはなりません。
・・・とは言っても当時の僕がそんなことをわかっていたわけではなく、後々になって考えてみると
「説明しやすいと思ったのだろうな~?」と年齢を重ねるにつれて理解できるようになりました。

前回記事でプラン一気に描き上げ、初回のプレゼン時、30分の打合せでプランの方向性が
確定したと書きましたが、16年前のあの感覚は今でも鮮明に覚えています。


アイディアが天から降りてくる


と言った感じで、一つヒントを見つけたことで、ディティールに至るまでのイメージが湧き出し、
手に持ったペンで頭の中のイメージを紙に一気に出力すると言ったものでした。

そのヒントを見出したのは石巻市の都市計画図を「ボーッ」と眺めていた時でした。

IMG_0940.jpg
■プラン説明に用いた石巻市の都市計画図

あなたには何が見えましたか~?(笑)

 

 

石巻市の都市計画図を観て閃き、最初に僕が描いたプランがコレ!

IMG_0919.jpg
■決定案(初回提案した2案を一部修正したもの)
公園などのプラン図をご覧になったことがある方は少ないため見慣れないかもしれませんが、
これは縮尺400分の1で描いた平面図と断面図で、トレーシングペーパーにペンで線を描入れ、
マーカーと色鉛筆で着彩したものです。


道路の歩道部分の舗装が道路計画により、砂浜をモチーフとしてデザインされていたことから、
デザインコンセプトを、石巻湾に注ぐ旧北上川と山としました。

クライアントとの打合せには、東北支店構造部の設計担当者と営業担当者が同行して
くれたのですが、僕がどういうプランを描いてきたのかは当日までまったく知らなかったため、


「公園のデザインってどんな絵なんですか?」


と車の中で聞かれたこともあり、トイレ休憩の際に今回描いた2案について簡単に説明したところ、


「カッコ良い~!」


と二人から言われ、説明した僕自身が驚いた記憶があります(笑)
そんな反応はそれまでで初めての経験でしたから・・・。

県の担当官(推定年齢50歳)に名刺を渡し、作成したプランを2案提出し説明すること10分。

僕の説明を黙って聞いていた担当官が静かに口を開き、


「こっちが良い!」


と言ってアッサリとプランが決定してしまいました。

その後、

「一つ注文があります。
 計画地の真ん中に道路用地があるため、明示だけしておいて欲しい。」

と要望を言われたため、東京本社へ帰社後、すぐに修正案を作成し図面を送って確認してもらい
プラン確定。

プランは概ね決まりましたが、工事用の図面を作成する実施設計は支店で行なうため、
東北支店のある仙台に行き、その後の設計作業を行なうスタッフに打合せの結果を説明し、
設計意図を明確にするため、次の基本設計に必要な平面割付図(形状を決めるための図面)や
主要施設の図面を用意させてほしい、と伝え後を託しました。

 

IMG_0943.jpg
■設計意図を伝えるスケッチ
今あらためて見ると絵が稚拙で恥ずかし~い(*^_^*)

設計業務も当然ビジネスですから、人件費が原価の大部分を占めるため、
仕事を受注したら早期にプランを確定し、必要な設計図書を作成することで利益率が大きく
変わってきます。
このプロジェクトまでの僕はかなり無駄な業務が多く、クライアントにとって何が重要で、
どうしたらそれを解決できるのか?またそういうプランを作成できるのか?
がこれを機会に少しつかむことが出来たように思います。

その後、僕は浜松へUターンしたわけですが、山形県や宮城県で設計したプロジェクトの
工事が幾つか完成したため、嫁さんと二人で浜松から2泊3日で秋の山形と宮城を旅して、
携わった物件の確認をしました。

その時に撮影したのがコレ。

 

蛇田歩道橋公園完成.jpg
■(仮称)蛇田歩道橋から撮影 ※1999年11月
石巻の山に沿って流れる旧北上川が、石巻湾(歩道部)に流れ込む様子を再現しました。
白い石が河原、青い石が川の水です。
写真奥に見えるトレリスはトンネルをイメージしました。

植栽部分はもっと立体的に造成し、蛇籠(ジャカゴ)を植栽帯を見切り、河川護岸の雰囲気を
出したかったのですがこれは採用してくれなかったようです。
しかし、平面形状や構造物はほぼ指定したものが採用されていました。
ちなみに植栽計画の基本案を作成したのはうちの嫁さんです・・・(笑)

 

Google Earthで見るとハッキリと僕が手で描いた通りのプランなのですが、3・11以後
どうなっているのか?とても気がかりですから、いずれはこの目で確認したいと思っています。


nice!(9)  コメント(5)  トラックバック(0) 

nice! 9

コメント 5

浜松自宅カフェ

●jun-arさん
 nice、ありがとうございます。
by 浜松自宅カフェ (2012-03-15 07:47) 

plusgate

都計図見て、何かが浮かぶ経験はまだありません^^
今度、じっくり見てみます^^
by plusgate (2012-03-16 23:39) 

浜松自宅カフェ

●chihoさん、カフェオランジュさん
 nice、ありがとうございます。

●plusgateさん
 特性のある計画地の場合、参考になるかもしれませんね。
 ですが戸建て住宅の設計で都計図からインスピレーションを得る事は
 少ないですよね(笑)
 でも、一団の宅地をトータルに計画する場合は「あり」かもですよ!
by 浜松自宅カフェ (2012-03-17 13:31) 

浜松自宅カフェ

●マチャさん、えーちゃんaaaさん
 nice、ありがとうございます。
by 浜松自宅カフェ (2012-03-18 21:49) 

浜松自宅カフェ

●prostさん
 nice、ありがとうございます。
by 浜松自宅カフェ (2012-03-21 19:30) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました