山形の自然が育んだ弓張平公園(自然編) [ ・ランドスケープデザイン]
秋の山形、松島、石巻をめぐる2泊3日の旅の初日は、山形駅から一般道で約1時間の
位置にある、山形県立奥奥羽山系レクリェーション都市 弓張平公園で夕暮れまで過ごしました。
この公園は山形新幹線が開通した20年前に、森林体験区(ゾーン)の実施設計を担当させて
いただいた物件ですが、一期工事完了時の天然のブナ林が伐採された惨状を目にした際、
「何てことに手を貸してしまったんだー!!」
と後悔し、公共事業におけるランドスケープデザインの仕事に対し、疑問を持ち始めた
プロジェクトでした。
そんなことなど知らない娘達ですが、今回の旅行で「一番自然が良かった!」と
言ってくれたのが、この公園でした♪
■弓張平公園の自然体験区(ゾーン)
初回の設計から20年、工事完成からおよそ17年が経過した様子です。
この豊かな自然を目にするなり、長女も次女も大喜びで駆け出しました!
公園と言っても、150ha(ヘクタール)もある自然公園のようなものですが、150haと言っても
ピンと来ないかもしれませんよね?
ちなみに1haは、100m×100mの面積ですから、10,000㎡で約3,000坪。
浜松の平均的な住宅用土地面積を、60坪程度とすると、1haには60坪の宅地が
50宅地も入る面積です。
で、、、150haと言うとその150倍!
やはり、イメージできませんよね~(笑)
右下のスケールが参考になると思いますが、0~100mの四角形が1haです。
僕が担当した自然体験区は、「現在地」と表示されている中央右側にある2/3程度の部分で
約5020haありました。
通常、公園の実施設計に使用する図面の縮尺は、1/200~1/500程度ですが、
それでは納まりきらないことと、発注者(山形県)の指示により、千分の一スケールで
平面図を作成したのですが、それでも巨大でとっても作業性が悪かったです・・・。
千分の一スケールだと、3m幅の園路がたった3mmの幅でしか表現できません。
当時は、CADではなくすべて手描きでしたから、曲線定規を駆使しながら園路の線形(形状)を
決めていった覚えがあります・・・(ーー;)
公園の中央部分は他社が行なった基本計画で、コミュニティー広場とネーミングされていて、
案内図左側の先に月山(がっさん)が見えます。
■自然体験区入り口から望む月山
駐車場の向こう側は、スポーツ園区と言うゾーンで、野球場や陸上競技場が整備されています。
そんな広い公園の中で、僕が設計を担当したエリアが手前の自然体験区と言う部分。
一見、何の変哲もない緑の多い普通の公園ですよね~。
メイン園路の脇にはこんな小川が流れていますが、実はこれも設計させていただいた
人工の構造物です。
元々あった素掘り(すぼり)の側溝を、森の小川として整備したもので、鳥海山の自然石で
護岸を固めてあります。
本来なら多自然型と言って、自然の川のように作りたいのですが、何しろ積雪4mの土地。
春の雪解けの際には大水と共に多量の雪が動くため、護岸を固めておかないと雪の移動で
壊されてしまいます。
それでも15年の歳月は長いもので、人工的な護岸には苔が生え自然に感じられるのです。
よーく考えると、こんな護岸や河床は実際には存在しないのですが、自然の持つ力に
驚嘆しました。
■自然体験区のサブ園路
メイン園路から、森の小川を渡って林の中に入ると天然のブナが茂る気持ち良い森の
景観が楽しめます。
ここに入った途端、子供達が「ワァ~!」と言って駆け出していったのがトップの写真です。
最初は気付かなかったのですが、この写真を見ると娘達は、上の方を見ていますが、
この場を体験すると上を見てみたくなります。
今回、ここを訪れるのは12年ぶりでしたが、その間に驚きの変化がありました。
園路のアップですが、わかります?
ナント!園路表面の緑は、芝生ではなく、自然に生えた苔だったのです!
これは当然、設計者である僕らが意図したものではなく、何ヶ月も雪に覆われている土地と
多くない利用率のお陰。
人工的に造成した公園であるにも関わらず、10数年でここまでなった自然の大いなる力に
感謝致しました。
当然、子供達は頭で理解して喜んだのではなく、今まで見たこともない深い自然の力を
肌で感じてくれたのだと思います。
そして、写真では絶対伝わらないのがヒンヤリとして湿った空気感。
それと、周囲の山の量感。
もし、何かの縁で山形県へ行かれることがありましたら、是非、足を運んでみて下さいね!
その時、ご相談いただければ、ここにしかない面白い場所や食べ物などをお教えしちゃいます♪
この後は、「こんな物も設計したよ~♪」集です。
子供達が乗っている小川の飛び石とその先の自然石階段
設計図書は断面詳細図に、石の種類、大きさを記載し、石材の見積書を提出します。
意外に苦労したのが、この丸太橋です。
雪解けで壊されないよう取り外しできるようになっていますが、苦労したのは構造計算(笑)
こんなものでも構造の検討は必要ですが、僕自身やったことがなかったため、
土木技術者の上司に教わりながら、役所の担当者と相談しながら設計しました。
こんな木製丸太階段にも設計図はあります♪
設計図がなければ、施工業者は何でどのように作れば良いかわかりませんし、
そもそも工事費も算定できませんから、入札にかけることができませんよね?
ランドスケープデザインと言うと何か凄い仕事に思われる方も多いのですが、
実際はこうい地味な仕事の積上げで成り立っていることを、ご理解いただけたら幸いです。
●jun-arさん、tochiさん
nice、ありがとうございます。
by 浜松自宅カフェ (2012-11-05 19:12)
●今造ROWINGTEMAさん、きゅんぱちさん
nice、ありがとうございます。
by 浜松自宅カフェ (2012-11-06 20:06)
丸太橋も構造計算してるんですね~
当たり前といえばそうかもしれませんが、
かなり驚きです^^
by plusgate (2012-11-07 14:00)
●夢空さん
nice、ありがとうございます。
●plusgateさん
今回の記事は同業の方向けだったかもですね(笑)
もちろん、この程度の丸太橋なんて誰が見ても絶対大丈夫なわけ
ですが、公共事業の場合、それを証明する必要があるわけですよ。
参考までにプロセスを説明すると、構造検討自体は「単純梁」の
等分布加重で解くわけですが、上部構造(桁)と下部構造(橋台)に
わけて検討し、それぞれの形態を決めます。
ただ、「道路橋示方書」には丸太橋の設計指針なんてありませんから、
それを決めるのに苦労したところです(笑)
by 浜松自宅カフェ (2012-11-07 21:48)