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16年ぶりに訪れた厚木市営「及川球技場」 [ ・公共事業の仕事]

TBSこども音楽コンクール厚木地区大会での演奏が終わると子供達はバスに
乗り込んで学校に向けて出発します。

演奏終了15時30分学校到着19時30分の予定ですから、その時刻には学校で
子供達を迎えに行かなければなりません。

この間の4時間で厚木市文化会館から浜松市まで戻らなければならないのですが、
厚木市内でどうしても立ち寄っておきたいところがあったた、長女の学校の演奏がすべて
終了したところで、応援に来てくれていた義母や義弟への挨拶を済ませると足早に
会場を出発。


どうしても立ち寄りたかった場所とは19年前から約3年間、設計を担当した公共施設。

 

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■秋晴れの球技場とナイター照明
1997年8月以来、実に16年ぶりに訪れたのは、1998年開催のかながわ・ゆめ国体
女子ソフトボール競技場として利用された厚木市営 及川(おいかわ)球技場です。

 

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■球技場全体図
ご覧のようにAB2面あり、2試合同時に競技ができます。
それぞれにメインスタンドと盛土スタンドがあり、収容人員は忘れましたが、
設計着手時には当然、決まった要求がありました。

当時はCADなど使用していませんでしたから、図面はすべて手描き。
実施設計時の平面図は1/500スケールでA1サイズ(A3版4枚分)でした。


1994年4月に厚木市のご担当の方と初回の打合せ。
当時入社5年目の僕が基本計画を担当させていただくことになりました。
(ダイアリーと記憶をたどりつつですので、多少の前後はあるかもしれません)

 

 

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■球技フィールド
砂入り人口芝のフィールドです。
張り替えされたのだと思いますが、とても綺麗な状態で使用されていることから、
今でも市民に愛着を持って利用されている様子がわかり嬉しくなりました。

当時は国体ソフトボール場としての利用目的でしたが、フットサルやサッカー利用の
要望も増えてきたのでしょう!

 

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■試合の様子
少年野球だと思われますが、丁度2面とも試合に利用されている最中でした。
メインスタンドと管理棟はRC構造、いわゆる鉄筋コンクリート造で、基本設計からは
建築設計部門が担当し、建築部分で僕が担当したのは基本計画までの
全体配置計画です。

 

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■盛土スタンドを歩く嫁さんと次女
長女は演奏会場から学校へ戻るバスの中ですから、この場にはいないのが少々
残念でした。

こういうプロジェクトの場合、設計と言えども一部門だけでは完結できません。
僕らランドスケープデザインが主体となりますが、その他にも測量部、地質、土質、
土木設計、建築設計部門が後々関与することになります。


この現場は、事前に地質調査をおこなったところ軟弱層を挟んでいるため、田んぼを
2m近く盛土して造成すると約40㎝の圧密沈下が想定されることが判明しました。

そこで国体の開催に間に合わせるため、圧密沈下を促進させる工法(工事の方法)を
選択し、工事が適正に行われるよう、設計監理も担当させていただきこれがとても
良い経験になりました。

 

もっとも、土木工事は僕が所属するランドスケープデザイン部門ではなく、隣の課が
担当し、一緒に設計業務を進めて行きましたが、土木を担当した課長がまた
横着な人で何度か衝突したのは今となっては良い思い出です(笑)

 

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■山に囲まれた長閑な環境
写真では潰れてしまっていますが、西側は山に囲まれておりとても良い環境の
球技場です。
工事中は後輩と交代で週に2~3日現場に通っていましたが、昼食をとるお店がとても
少なくて困った覚えがあります。

 

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■門扉(もんぴ)
地盤を造成したり、盛土スタンドなどは土木設計チームが担当しますが、園路の舗装や
野球フィールドなどの意匠に関する構造物や施設はランドスケープチームの担当です。

こんな何でも無いような門扉と言えども、既製品がありませんから、完全オリジナルで
僕がデザインしたものです。


材料はスチール(鉄材)ですが、錆止めや塗装の耐久性を落とさないよう、耐候性鋼
と言う特殊な材料を使用しています。
一般にコールテン鋼と呼ばれるもので、錆が成長しない材料のため、塗膜が錆で落ち
難いものとされていましたが、現場施工に配慮がいるのと工事費も割高になりました。

それだけにその後の状況が気になっていたのですが、塗装の状況も良好で
「当時の選択は間違っていなかかったのかな?」と、ホッとしました。

 

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■タイル舗装のデザイン
実はこのデザイン、嫁さんによるものです(笑)
当の本人はすっかり忘れていて、この場に来ても全然覚えていませんでした。

厚木市の市魚は「鮎(アユ)」なのですが、当時、市の担当係長から、

「デザインのモチーフにアユを使ってくれ!」

と要望されていました。

 

長年、このBlogを読まれている方はご存知だと思いますが、僕は小学生の頃から
天竜川で鮎釣りをして育ちましたから、鮎のいるシーンは僕にとっての原風景の
ようなもの。

今の嫁さんと結婚する前にも、僕は嫁さんを連れて天竜川へ鮎釣りに行ったのですが、
その彼女が鮎釣りで体験した、川面で遊ぶ鮎のイメージをイラストにしてくれました。
それが、とても良く表現されていたため、担当係長に説明し採用となりました。


この説明ではイメージできない方も多いとは思いますが、アユを誰にでも判るように
表現するとどうしてもマンガっぽくなってしまうため、使用したくありませんでした。
(別の場所では、係長の指示通りマンガの鮎が使われていますけど・・・)

 

以上は裏話ですが、もう時効かな?と思いありのままを書かせていただきました。
今、皆さんの周囲にある公共施設も案外こんな経緯でできているのかもしれませんよ。


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コメント 5

plusgate

94年4月は僕が大学に入学した年です。
あの頃にそんなお仕事されてたんだな~と思いめぐらせていました。
横着な課長との衝突。
そういうのって忘れない思い出ですよね~(笑)
by plusgate (2013-09-30 14:47) 

浜松自宅カフェ

●plusgateさん
 そうなんですかー!
 仕事の内容はそういうことが出来る職業に就いたことと
 理解あるクライアント様のお陰ですよ。
 本当、クライアント様には助けていただきましたし、育てて
 いただきました。
 僕は実施設計が中心でしたから新入社員の年に描いた図面が
 翌年には完成していると言う成功体験を最初からできたのが
 自分自身の方向性を決める大きかったと思います。

●yanasanさん、jun-arさん
 nice、ありがとうございます。
by 浜松自宅カフェ (2013-10-01 08:31) 

浜松自宅カフェ

●chihoさん、Kojiさん、いっぷくさん
 nice、ありがとうございます。
by 浜松自宅カフェ (2013-10-01 13:25) 

今造ROWINGTEAM

及川球場はご夫妻にとって思い出の場所なのですね♪^^
タイルのデザイン、素敵~♡

ねね
by 今造ROWINGTEAM (2013-10-02 13:06) 

浜松自宅カフェ

●ねね@今造ROWINGTEAMさん
 自分の手の中から産み出したものは、一生気になりますけど
 嫁さんはそれほどでもない様子でしたね(笑)
 何しろ関わったことすら覚えていなかったようですから・・・。
 タイルの舗装パターンにこういうデザインにすることを僕は
 あまりしないんですけど、鮎がテーマでしたからね。
by 浜松自宅カフェ (2013-10-02 14:59) 

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