SSブログ

木造住宅の耐震性(その4)「実大震動破壊実験」 [ ・耐震強度、地震対策]

木造住宅の耐震性シリーズ(その4)最終回のテーマ

『耐震改修は、本当に効果があるのか?』

をお送り致します。

 

結論 「耐震改修の効果は実験により確認された」

 

兵庫県南部地震を契機に、耐震改修の効果を検証するべく行った国家プロジェクトが、
「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」。 通称、『大大特プロジェクト』

5ヶ年計画の大きなプロジェクトで、
文部科学省が主管官庁となり、独立行政法人「防災科学技術研究所」(防災科研)
行なう一大プロジェクト。

    (「踊る大捜査線」のテーマソングが聞こえてきそうじゃない?)

 

■耐震補強1.57 vs 旧耐震0.43
建築基準法で要求されている耐震性を1.0として評価した、この2棟の住宅の耐震性能
 A棟の耐震性 0.43 (※補強なし)
 B棟の耐震性 0.31 → 1.57(補強後)

この2棟の在来木造住宅に、兵庫県南部地震で採取した震度7の地震波*で揺らしてみる。
*「JR鷹取波」地震波をサンプリングした地名から。

 

■衝撃の既存木造住宅の倒壊実験映像
1974年に新築で販売された建売住宅2棟。ほとんど同じ間取りの住宅を
切断し、震動台に移築し、兵庫県南部地震の地震波*を入力して倒壊させた衝撃映像です。
↓ページ中段(在来木造11/25)の画像をご覧下さい。10秒弱で倒壊します。
http://www.bosai.go.jp/hyogo/live/live-wood.html

 

■知っていただきたいこと
(その1)でお話した通り、建築基準法は「建築の最低基準」がコンセプト。
一方、実験で入力する兵庫県南部地震は、建築基準法で想定している
きわめてまれに起こる地震』の2倍の加速度であった。

地震の破壊力は、地盤の加速度にほぼ比例する。

と言うことは、建築基準法ギリギリの耐震レベルでは耐えられない可能性があり、
理論上は2倍の補強をしないと耐えられないと言うことになる。

   2.0(地震力) > 1.57(耐震補強) > 0.43(補強なし)

 

■実験裏話
坂本先生はじめ担当スタッフは、実験が終わるまでハラハラしていたそうだ。
と言うのは、倒壊実験にあたり以下の3つのシナリオが考えられたから。

 1つめのシナリオ  耐震補強住宅(○) 無補強住宅(×)
 2つめのシナリオ  耐震補強住宅(×) 無補強住宅(×)
 3つめのシナリオ  耐震補強住宅(×) 無補強住宅(○)

最悪のシナリオが3つめのケースで、起こっては困るシナリオなのであるが、
理論上起こりえたからだそうだ。
(言葉で説明するのは難しいので省略します)

数値性能上では、2つめのシナリオも想定される。
(地震力が、耐震性を上回ることが判っていたから)

果たして、、、


結果はご覧の通り。一同ホッと胸をなで下ろしたそうです。


nice!(4)  コメント(8)  トラックバック(2) 
共通テーマ:住宅

nice! 4

コメント 8

アキラ

東京お台場のビッグサイトで催された、建築展で起震車を経験したことがあります。
阪神淡路大震災と同じ大きさの経験でしたが、2m位も横にずれたような感覚で、基準法を守っただけでは、到底保たないな・・・と感じました。
映像をみましたが、昭和56年以前の基準法に基づいて建てられた家は、まあ、こんなものだと思います。
by アキラ (2006-07-05 10:47) 

たいせい

 はじめまして、あちこち見てて、たどり着きました。
 三州瓦製造メーカーのものなのですが、昨年一月の E-defenseでの実験にも立ち会わせていただきました(その他大勢としてですが)。
 瓦業界としては、実験の場では瓦の脱落がないことを確認する意味合いでの参加で、一枚の脱落もなくホット胸をなで下ろしたのを昨日のことのように思い出します。

 基本的に設計年度の古い建物が、過去の設計基準での設計であるために耐震性が低いのであり、単純に瓦屋根だから地震に弱いという理屈は間違っているとわけですが、阪神大震災以来の瓦が悪者と言うイメージに悩まされています。
(その当時の建物のほとんどが瓦葺きだったから、映像的に多くの倒壊建物がTVで映し出されたのが痛手でした。家の倒壊した現場のすぐ近くでは古い設計基準の鉄筋コンクリートのマンションも倒れていたのに....。)

 耐震改修で、瓦をやめて屋根を軽くするというのは一つの手法ではあるかもしれませんが(その方法は野路板の結露対策や断熱対策が必要で、安易にやると家の寿命自体を縮めてしまうのでは?)、新築でも瓦は嫌だというのはおかしな理屈だと思っています。
(基準法の瓦屋根の重さの区分は昔の土葺き工法のもので、今の屋根は乾式工法で約半分の重さになっているのも余り知られていないようですし....。)

 耐震改修の話しは、正直気が重いです。
by たいせい (2006-07-05 12:10) 

浜松自宅カフェ

●アキラさん
 あの画像見たら、「あっ地震!大きいぞ!恐い、にげな・・・」(ペシャ!)と
 なるのが良く判りますよね?
 僕も起震車しましたよ。座ってましたけど、逃げれないと思いました。
●たいせいさん
 こちらこそ、はじめまして!アキラさん経由ですかね?
 え~?Eディフェンスの実験を間近でご覧になったのですか?良いなぁ!

 僕はこんな家に住んでいますが、実は日本家屋が大好きなんです。
 だから、日本瓦が大好きです。過去ログをご覧になっていただければ判りま
 すが最初に設計した住宅は農家(民家)住宅でした。
 おっしゃるように、「瓦屋根=耐震性なし」みたいな図式ありますね?
 僕も胸を痛めていました。軽量瓦を開発しますか?
by 浜松自宅カフェ (2006-07-05 22:03) 

gottu329

建基法も大きく改正されそうですね。。。
一級建築士も試験形態が大きく変わるとか・・・
「新一級建築士」?たる名前になるとか???
現在、資格をお持ちの方にとっては、痛い法改正ですね。
また資格試験を受けなければいけないなんて・・・

わたしは・・・新たにできる建築設備士でも受験してみようかな・・・
by gottu329 (2006-07-06 00:34) 

浜松自宅カフェ

●hgchさん
 新制度はどうなるのでしょうかね?いずれにしてもマークシートやペーパー
 試験で建築の質が保て、信頼が回復できるとは思えないのだけど・・・
 まっ、どうしても試験に委ねるということであれば、やるだけですよ!
by 浜松自宅カフェ (2006-07-08 22:29) 

たいせい

 先月末、E-ディフェンスでの実大試験に再度行ってきました。
 速報記事のTBを送らさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
by たいせい (2007-03-08 14:51) 

浜松自宅カフェ

●たいせいさん
 TBありがとうございます。今後も色々と勉強させて下さいね。
by 浜松自宅カフェ (2007-03-09 21:15) 

たいせい

拙BLOGへの書き込み、本当にありがとうございました。
 自分の知る範囲で(又聞きで恐縮なのですが)、瓦屋根と耐震性についての記事を、引き続き書きました。
 構造について、私の理解の誤っているところもあるやもしれず、もしお時間いただける際で結構ですので、アドバイスいただければ幸いに思います。

 TBを送らさせていただきましたので、よろしくお願いいたします。
by たいせい (2007-03-13 16:11) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 2

トラックバックの受付は締め切りました